Public Verification Records Treasure Planning LLC

Public Verification Record No.2

公開検証記録 No.2

量子化済み公開モデルの平均品質を、原本と同一条件で測定した記録

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項目内容
発行トレジャー企画合同会社 / 2026年8月9日
1.0
位置づけ本書は秘密保持契約を必要としない公開資料です。

1. なぜこの記録を出すか

大規模言語モデルを限られた計算資源で動かすため、量子化(圧縮)されたモデルが 広く配布されています。しかし、圧縮前の原本と同一条件で品質を比較した記録が 公開されている例は、ほとんどありません。

当社は、海外の主要な MoE(Mixture-of-Experts)モデルについて公開されている 量子化リポジトリを全数調査し、原本との同一条件の定量比較が公開されている 割合を集計しています。大半のリポジトリには、そうした比較がありません。

母集団の件数、比較が公開されていた件数、判定の基準、集計に用いた手順は 調査方法に掲載しています。数値は再集計によって 更新されるため、本書には転記していません。

本書は、その空白を1件ずつ埋める記録の第2号です。

1.1 本号の位置づけ

公開検証記録 No.1 は、同一の配布者による別のモデルの 量子化版を測定したものです。本号は、それと次の条件を揃えています。

揃えた条件内容
配布者同一(QuantTrio)
量子化方式同一(AWQ / 4bit / group_size 128 / version gemm / zero_point true)
非量子化の範囲同一(.mlp.gate のみ)
モデル構成同一(48層 / 128 expert / hidden 2048 / moe_intermediate 768)
評価データ同一(sha256 一致・後述)
測定トークン数同一(54,219)
指標・統計手法同一(Δbpb / 系列単位 paired bootstrap)
異なる点測定対象のモデルのみ

したがって、本号と No.1 の数値の差は、配布者・量子化設定・評価条件の違いによるもの ではありません。比較結果は第5.2章に示します。

2. 測定対象

2.1 量子化版(測定対象)

項目内容
リポジトリQuantTrio/Qwen3-30B-A3B-Thinking-2507-AWQ
revision3723ded1261d119450306434d8f454fb217ac1fd
ライセンスApache-2.0
量子化方式AWQ / 4bit / group_size 128 / version gemm / zero_point true
非量子化.mlp.gate(router)のみ
構成48層 / 128 expert / topk 8 / hidden 2048 / moe_intermediate 768
checkpoint のキー総数56,115

取得した実体の sha256

948ce02f04cf58748d27d27f82b24ac60d4ebc5a0480b0d96a876b1bf0ff4568  model-00001-of-00004.safetensors
4aa48901b2a928545ead20cb869fead4f9015197ab98369a646dc3f4b7747558  model-00002-of-00004.safetensors
f5ec9a76ed137dcf4f8c157fc497d2269cc2dbc98a85cf350dd8daa933f3dbef  model-00003-of-00004.safetensors
0535d6f81184f9f78e6ad02941e4280aa7d55deb39a2f210ee42e25cc030f360  model-00004-of-00004.safetensors
fb919f95ea713dfe151d753f1a72b8aca4d91b37bf037556e70bb37e034687c2  config.json
206114c230a700259ec81a0e466ffca32462afb8c558f76ca1aea55e73bc331d  model.safetensors.index.json
19564a48c4f71a2a1b937cce34c737a1e662b171c5f5d7edf641a15cd896f07d  tokenizer.json
sha256 の出所について

上記のうち .safetensors 4件は、配布元が Git LFS のメタデータとして 公開している値です。当社が実体から算出した値ではありません。この値は、同じ revision をダウンロードした第三者が sha256sum で照合できます。

config.json / model.safetensors.index.json / tokenizer.json の3件は、当社が実体を取得して算出した値です。

同一性に関する注記

リポジトリが更新された場合、revision だけでは同一性を特定できません。上記の sha256 が本書の測定対象を一意に定めます。

2.2 原本(比較基準)

項目内容
リポジトリQwen/Qwen3-30B-A3B-Thinking-2507
revision144afc2f379b542fdd4e85a1fcd5e1f79112d95d
精度bfloat16

2.3 同一系譜であることの確認

測定に先立ち、量子化版が原本と同一の系譜であることを機械的に照合しました。

照合項目結果
config 構造一致
tokenizer の語彙ハッシュ一致
非量子化層の重み(6テンソル抽出)ビット単位で一致

抽出して照合した6テンソルは次のとおりです。

model.embed_tokens.weight
model.layers.15.self_attn.q_norm.weight
model.layers.22.self_attn.q_norm.weight
model.layers.30.input_layernorm.weight
model.layers.38.input_layernorm.weight
model.layers.45.input_layernorm.weight
比較対象から除外した1件

_name_or_path(量子化版のみに存在)を比較対象から除外しています。 これは量子化作業時のパスを記録するメタデータであり、モデルの構造にも checkpoint のテンソルにも対応しません。除外した事実と理由は測定記録に 保存しています。

この1件を除き、原本と量子化版の config は完全に一致します。

3. 測定条件

項目内容
評価データ当社保有の holdout コーパス
評価データの sha256acc364043186af7d3785b83c85aba2cbe393c8c3fe1c19b89802a9a8c491652a
系列数 × 系列長53 × 1024
測定トークン数54,219
計算精度float16
GPUNVIDIA H100 80GB HBM3(81,559 MiB)
torch / CUDA2.12.0+cu126 / 12.6
測定日2026-08-07

評価データの sha256 は No.1 と同一です。両号は同一の評価データで測定しています。

4. 指標

Δbpb(delta bits per byte)を用いました。同一のテキストに対して、 原本と量子化版がそれぞれ何ビットを要するかの差です。

値が大きいほど、量子化版が原本より多くのビットを必要とする、すなわち 平均的な予測が悪化していることを意味します。

Δbpb = ( 量子化版の負対数尤度 − 原本の負対数尤度 ) / ln 2

同一のトークン位置どうしを対応させて差を取っています。

5. 結果

項目内容
Δbpb(点推定)0.01882
95% 信頼区間[0.01523, 0.02265]
区間がゼロを跨ぐか跨がない
判定

信頼区間がゼロを含まないため、この量子化版は原本に対して平均品質が 有意に劣化していると判定できます。

5.1 参考:容量

項目概算
原本(bfloat16)約 61 GB
量子化版16,809,468,128 バイト(約 16.8 GB)
約 3.6 倍
容量値に関する注記

量子化版のバイト数は、配布元のメタデータに記載された .safetensors 4件の合計です。原本の値はディレクトリ容量からの概算であり、厳密なバイト単位の 集計ではありません。

5.2 No.1 との比較

第1.1章に示したとおり、本号と No.1 は測定対象のモデル以外の条件を揃えています。

記録測定対象Δbpb95% 信頼区間
No.1QuantTrio/Qwen3-Coder-30B-A3B-Instruct-AWQ0.05363[0.04071, 0.06796]
No.2(本号)QuantTrio/Qwen3-30B-A3B-Thinking-2507-AWQ0.01882[0.01523, 0.02265]
2つの区間は重なりません

No.2 の上限 0.02265 は No.1 の下限 0.04071 を下回ります。両者の差は、 本測定の統計的な不確かさの範囲内では説明できません。

この2件は、配布者・量子化方式・group_size・非量子化の範囲・モデル構成・評価データ・ 測定トークン数・統計手法をすべて揃えています。異なるのは測定対象のモデルだけです。 したがって、同じ配布者が同じ設定で作成した量子化版であっても、原本との平均品質の差は モデルによって異なることを、この2件は示しています。

なお、この2件は2つのモデルについての観測です。どの程度の差がどの範囲の モデルで生じるかについては、本書は何も述べていません(第8章)。

5.3 配布者の記載について

本号の測定対象について、配布元の README には量子化による品質の変化に関する 記載を確認できませんでした(2026年8月7日時点、上記 revision)。

No.1 の測定対象では、配布者自身が README に「4bit 量子化のもとで 著しい損失があるため注意して使用されたい」旨を記載していました。本号の対象には 同種の記載がありません。

6. 方法

6.1 信頼区間の算出

系列単位の paired bootstrap により信頼区間を算出しました。

  1. 53系列それぞれについて、原本と量子化版の差の平均を求める
  2. 53系列を復元抽出で選び直し、その平均を計算する
  3. 手順 2 を 10,000 回繰り返して分布を作る
  4. 分布の 2.5 パーセンタイルと 97.5 パーセンタイルを区間とする

6.2 リサンプリングの単位を「系列」とした理由

同一系列内のトークンは互いに相関しています。トークンを独立に抽出すると、 この相関を無視することになり、信頼区間が実際より狭く出ます。系列を単位にする ことでこれを避けています。

6.3 設定

項目内容
反復回数10,000
乱数シード42
有意水準0.05
リサンプリング単位系列(53本)
実装brain/linea_eval_schema.py
md538b1c2913f796051dfae1ccbd342d05d
リサンプリング単位について

本実装は、渡された配列を単位としてリサンプリングします(戻り値のラベルは question)。本測定では系列単位に集約した 53本(1系列 1,023 トークン、 53 × 1,023 = 54,219)を渡しているため、リサンプリング単位は系列です。

実装の md5 は No.1 と同一です。両号は同一の実装で算出しています。 本号の作成にあたり、同じ手順で No.1 の数値(0.05363 / [0.04071, 0.06796])を 再計算し、公開値と一致することを確認しました。

6.4 契約テスト

この実装には契約テストが付属しており、次を機械的に検査しています。

7. 再現について

本書の測定は、次の3つが揃えば第三者が再現できます。

#項目状態
1上記 sha256 の量子化版 checkpoint公開
2上記 revision の原本 checkpoint公開
3評価データ非公開
再現性に関する限定

評価データが公開されていないため、現時点で本書と同一の数値を第三者が 再現することはできません。

評価データの sha256 を記録しているのは、将来これを公開した場合に同一性を 確認できるようにするためです。別の評価データを用いれば、当然に異なる数値が 得られます。本書の数値は上記の評価条件におけるものです。

8. 限定事項

以下は、本書が主張していないことです。

9. この記録の使い方

本書は公開資料です。引用・転載は自由です。

引用時の条件

本書の数値を引用する場合は、第8章の限定事項を併記してください。数値のみを 切り出すと、本書が主張していないことを主張したことになります。

10. 発行者

トレジャー企画合同会社
代表社員 能勢 優治

〒271-0092 千葉県松戸市松戸1307-1 松戸ビル13F
nose@treasure-kikaku.jp

当社は、MoE 構成の大規模言語モデルについて、圧縮による品質の変化を測定し、 測定条件と範囲を証明書として記録する事業を行っています。